『無水掘工法』

(ロックアンカー工・ロックボルト工における削孔システム)

国土交通省近畿地方整備局和歌山河川国道事務所

海南国道維持出張所 所長 大野 清三

 

     表紙

無水掘工法をパイロット事業として活用した42号河瀬(鹿ヶ瀬)地区擁壁補強工事について報告します。

 

     工事概要

まず工事概要ですが、

工事名:42号河瀬(鹿ヶ瀬)地区擁壁補強工事  

工期 :平成16年2月21日〜6月14日

工事場所:和歌山県有田郡広川町河瀬地先

工事の目的:道路下の旧擁壁を補強する為

工事内容:アンカー工 削孔径 Φ90mm アンカー長9.0m〜12.0m 本数33本 合計365.0

です。 

この標準断面図のように 受圧板とアンカーで旧擁壁を押えつけ 補強しました。

 

     着工前写真

着工前の写真です。

 

     施工写真

そこに1.6m幅の足場を組み機械をセットし削孔している状況です。このような小型の削孔機を用いる為に仮設足場は小さい物ですみました。

 

     現場設置地盤確認状況

これは、現場で削孔時に排出されたスライムを採取した写真です。自由長部の土砂の部分は1.0m毎にスライムを採取し、定着長部の岩の部分では0.5m毎に採取しました。

無水で削孔する為に乾いた状態でパウダーコアを採取する事が出来、現場で確認し1本ごとに設置地盤の位置を確認して、1本1本削孔長を決定しました。

 

     削孔時設置地盤(定着層)確認状況

これは施工報告書から抜粋した削孔時設置地盤確認柱状図です。採取したスライムの写真を撮り、それを貼り付けることによって、報告書で全本数の土質状況が確認できます。

この3本のアンカーの削孔長は設置地盤の確認の後、設計の10.8mに対して

11.8m、12.8mと変更となりました。

 

     竣工後写真

これは、竣工後の写真です。このように受圧板を設置し擁壁を補強しました。

 

     活用の効果1

無水掘工法によって11本設置地盤の確認をすることによって、全33本中23本でアンカー長が変更となりました。内訳としましては21本で1.0m〜1.5m長くなりまして、2本で0.5m〜1.0m短くなりました。

結果としてアンカー長が長くなることでより確実に設置地盤に定着され、短くなることで無駄のない施工が出来たといえます。

 

     活用の効果2

また、従来工法は足場幅4.5mであるため足場の数量が710空mとなるが

無水掘工法の足場幅は1.6mであるために、足場が230空m

約1/3となりました。

それによって仮設足場数量の減少による工事コストの縮減が計られ

また、足場幅が4.5mから1.6mに狭くなることによって、民間境界を越えることなく足場を設置することが出来ました。

 

     問題点

この現場では旧擁壁の裏込めの奥に厚い崖錐堆積物が存在しました。

その層が自立しない孔が8本ありました。

その場合には一度削孔した後にセメントミルクを注入し、固まった後に再度削孔するセメンテーション方式をとりました。

本現場の土質はかなり悪くセメンテーション方式でも孔壁が自立しない孔が5本あり

その孔はケーシングを使用しニ重管無水掘工法にて施工しました。

その手順で施工したため施工に時間がかかりましたが

従来、設計時検討段階で孔壁が自立しない層が確認できた場合ははじめから二重管無水掘工法で施工しますが、

本現場ではパイロット事業ということで、先ほどの手順をとることによってこの土質としてのデータを採取しました。

 

     まとめ

最後にまとめと致しまして、アンカー工は補強工事ですので、何らかの問題があるから施工されるわけです。そのような現場に削孔水を使用することは地山を傷めるだけでなく、施工時の危険性が非常に高くなります。

無水掘工法は水を使用しないために

品質・安全面においては無水掘工法が最適です。

無水掘工法はどのような土質でも対応できますが

土質によってはコスト・工期が左右されます。

したがって、設計検討時に、発注者・設計者・開発者が三位一体となって検討することによって、より確実に品質の確保やコストの縮減が計れると思われます。